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歯科医院に訪れる患者さまは半分以上が有病者

 歯科医院だけではなく、医療機関では(最近では処方箋調剤薬局でも)受付をすると、まず初めに問診票の記入を求められます。これは患者さまの主訴に対する現状や治療履歴などを把握するのと同時に、全身的なあらゆる問題を抽出するためのスクリーニングが必要だからです。歯科医療には患者さまが想像している以上に、あるいは体感している以上に全身に負担をかける処置がたくさんあります。全身状態を知らずに歯科治療を行なうと、思わぬ重大な事態を引き起こす可能性がありますので、歯科医師はこれらを認識し、あらゆる事態を予測し、予防する責任があります。さらに予測できない事態にも適切に対処できなければなりません。

 日本が超高齢化社会に突入する現代において、歯科医院に受診される患者さまの約半分は何らかの持病を抱えておられます。口腔は消化管と呼吸器の入り口であり、全身と密接に関係のある重要な器官ですので、やはり病気を知らずして歯科治療を行なうことはできません。

多剤服用とお薬手帳の大切さ

 60歳以上の患者さまですと2種類以上のお薬を内服される患者さまが約7割になります。これは国民皆保険の日本ならではの現象かもしれませんが、薬の内容から患者さんの持病が透けて見えてくるという意味では、問診で聴取する上で大いに価値のある情報です。歯科医師は薬に対する知識はもちろんのこと、その薬から類推される持病と現状を推察することが必要です。場合によっては主治医に対診を行い、情報取集をすることも大切ですが、病気の知識がなければ対診を行うことができません。

 ​また、これは本当によくあることですが、患者さまご自身が何を内服しているのか把握されていないことがあります。あるいは、ご自身が何の病気で病院やクリニックに受診しているのか、ご理解されておられない方もいらっしゃいます。歯科は消化器外科や循環器内科、耳鼻咽喉科などと同じ医療の一分野であり、全身状態は大変重要な情報です。前述の通り、我々医療従事者は問診票で患者さまの全身状態を確認しています。その際にお薬手帳は大変貴重な情報源ですので、歯科医院に受診される際は必ずお薬手帳をご持参ください。

持病があるから歯科治療ができない、ということはほぼありません。

​有病者歯科医療学会専門医に相談ください。

 歯科治療を避けるべき全身状態があることは否定しません。

 例えば、コントロール不良な糖尿病、異常な高血圧、薬剤性以外の出血性素因が疑われる場合、ある種の薬剤を使用している場合等。しかし、これはかなり特殊な事例です。また、歯科治療の内容によっては可能なこともたくさんあります。

 有病者歯科医療学会の専門医が在籍する当院では、「何となく怖いから断る」「よく分からないから大学病院に紹介する」ということは致しません。逆に、危険と判断した時はきっぱりと治療を中止し、次善策を考えます。そのオンオフを適切に行う事こそ、有病者歯科医療の神髄と考えます。

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